
こんにちは。ライターの深田です。
太鼓の音がポンポンポンと、どこからともなく聞こえてくる季節がやってきましたね。
担ぎ手不足、運営の資金難でなくなっていくお祭りが増えている今、長い歴史のなか町で親しまれ愛され続けているお祭りが三崎にはあります。
三崎下町が一年で一番盛り上がる海南神社の例大祭です。
今年も三崎下町が一年で一番盛り上がる夏祭りがやってきます。
2024年7月13日(土)、14日(日)に三崎港にある海南神社で開催される「例大祭」に向けて、三崎下町では、6月中旬から練習がはじまり、一ヶ月かけて練習を行います。
昨年、ミサキステイルのみくさんの紹介で、獅子としてはじめて例大祭に参加しました。
4年ぶりの開催となった昨年は、久里浜の花火大会の中止と相まって、いつも以上に大勢の観客で賑わいました。
上京したあの子も参加するために帰ってくるほど、郷土愛を深める三崎のお祭りは他のお祭りとはひと味もふた味も違います。
その魅力について、昨年の様子と一緒にご紹介します。

夏祭り「海南神社 例大祭」
海南神社 例大祭では、三崎の7地区「日の出」「入船」「仲崎」「花暮」「西海上」「宮城」「西浜」の年番制で回っていきます。以前は13地区ありましたが、合併され今では7つになったそうです。三崎の最盛期は、すごい大規模のお祭りだったようですね。
昨年は入船地区が本年番【獅子】を行い、花暮地区が【神輿】、そして宮城地区が【付け神輿】を行いました。 前回、私は入船地区で獅子として参加させていただきました。
この例大祭は、他のお祭りではあまり見られない木遣師(きやりし)の唄に合わせて、神輿や獅子が町を練り歩いて災いを祓います。
木遣師とは、江戸時代の木こりの唄からはじまり、お祭りにも使われるようになったそうです。木遣師は男性だけでなく、女性や子どもを含め、地区ごとに10人前後います。唄も地区ごとに違い、10種類以上ある木遣師の唄に合わせて担ぎ手は「うけ」を唄い動きます。よーいよーい!
最年少の6歳で大人顔負けで唄う木遣師キッズやオリジナルの歌詞で唄う粋なベテランも見どころです。力強く響きわたる唄声は魂が揺さぶられるものがあります。
神輿は担ぐだけではなく、木遣の唄に乗せてお神輿を上へ高く上げて差します。「差す」とは、「御霊(神様)を高く差し上げる」 という意味もあり、御布施でお願いをしたお店の玄関前では商売繁盛、家の玄関の前では家内安全を祈って行います。
獅子も同じように行いますが、お店やお家の中まで土足で入り、獅子も大きな頭を高く上げてカンカンと口を鳴らして差します。雄と雌の2頭を大人数で持ち賑やかになるため、子どもや女性からもとても人気です。

1ヶ月にも渡る練習
「お祭りは本番までが祭りだ」とよく言いますが、練習や宵宮は本当に楽しかったです。
昨年、私は入船地区で獅子として参加しましたが、入船の皆さんの作る空気感かもしれませんね。
練習は地区ごとに行われ、場所も曜日も異なります。
木遣師の唄にあわせて、担ぎ手の動きを練習しました。最初は木遣の唄が分からないため、みんなに合わせますが周りからサポートの声で段々と理解していきました。担ぎ手は裾をパタパタと煽り獅子の動きを表現したり、「差す」時は、皆で前に駆けていきます。(言葉では伝えきれないのでぜひ、間近でみていただきたい!)
いちばん重要なのは先頭の獅子の頭です。獅子の頭は重く、前から2番目を担当する人は力持ちに限ります。そうすると1番前は安心して頭と顎を動かすことができます。しかし、1番前は難しいので練習にちゃんと参加して動きとタイミングを揃えられるようにならないと、かっこ悪くなってしまいます。
私は練習の時に1番前で獅子の頭を初めて持ったときあまりの重さに圧倒され、自分の手を巻き込んでしまい獅子に食べられてしまいました。なんとか軽い怪我で済み、みんなには、「本番じゃなくて良かったね」と言われました。なぜなら練習用の頭と違って本番の獅子は更に重いので、大きな怪我につながることもあるためです。
安全第一ですが、獅子に噛まれることは縁起がいいと言われているので、昔は、親御さんが子供を噛んでもらうために差し出し噛んでもらっていたそうです。お子さんにとっては大きな獅子の頭に噛まれるのは、怖くて大泣きしてしまいますね。

前夜祭となる宵宮
お祭り前日の夜に行われる宵宮(よいみや)では、西海上地区がこども神輿を大人さながらで担ぎ、海南神社へ神輿を納め、その後、日の出地区と西海上地区で大人たちが神輿を担ぎます。
私は観客として見に行きましたが本番さながらの迫力で、この宵宮も見逃せないお祭りの一部です。


神輿を納めた後は、下町の星空の下にある広場に集まってみんなで宴会がはじまります。移住者にとっては、地域の人と仲良くなれる場でした。冗談ばかり言い合って盛り上がっていますが、お祭りは明日です。すでに声が枯れてしまったり、体力の限界になりながらも、どんなときも全力で取り組む皆さんはかっこいいですね!

例大祭 本番 ードキドキの1日目ー

いよいよ、お祭りは1日目。軽い雨に見舞われましたが、おかげさまで1日中涼しくお祭り日和でした。
個人的にお祭りの見どころのひとつ目は、最初に本殿にまつられている御神体(ごしんたい)を獅子や神輿に遷す儀式「御霊移し(みたまうつし)」です。この儀式によって、獅子や神輿を担いで練り歩くことで、神様が巡幸したことにことになります。
これを渡御(わたり)といいます。この儀式の際に、神様が見えないように周りを覆って見えないように行います。神事は奥深く慎ましいものを感じます。また、天狗が願いを込めて弓を何本か放ちます。それを獲った方には厄災にあわないとされています。

儀式のあとに、猿田彦、天狗の空面と雨面が先導して進みます。続いて金棒と獅子、金棒と山車、金棒と神輿の順番で練り歩きます。
私は獅子がでるお祭り自体はじめて知ったため、すべての経験が新鮮で驚きと楽しさの連続でした。
みんなでおしくらまんじゅうのようにお店に詰め込んで商売繁盛を願う、そこには体験しないと分からない楽しさがありました。
商売繁盛で差したお店のおばあちゃんが涙ぐんで喜んでいる姿をみて、また胸が熱くなります。
この下町の三崎っ子はお祭りを見る目が肥えていて「今年の神輿はきれいね〜」「どこどこの木遣師はすごいね!」など立ち話がはじまるそうです。また、お祭りに参加する話をするとみんな歓迎して、グッと距離が縮まります。それほど祭りは、郷土魂に根付いているようです。
21時頃に獅子や神輿が仮宮に入り、1日目は無事に終了。

例大祭 本番 ー灼熱の2日目ー

2日目は快晴となり気持ちの良い天気ですが、とにかく暑い!!休憩時には生ビールやジュース、オーエスワンの給水ができます。練習の時から生ビールがありました!素晴らしい地区ですね。熱中症になることを恐れビールを我慢していましたが、私は途中からバテてしまい、獅子で一番楽しいと言われている交番前の坂を登りそびれました。また、機会があるならばぜひ、挑戦したいです。
最近、お祭りの先輩に聞きましたが熱中症になりやすい暑い日には、朝一にオーエスワンを飲むといいそうです。
そして、ミサキステイルの朝めしや「あるべ」では、獅子の花形である頭をやらせていただきました。あるべの商売繁盛を祈って!!
一生懸命がんばりました。

ついに、フィナーレの時間がやってきます。獅子や神輿を海南神社に納めていきます。
お祭りは元々男性のみが参加できる神事でしたが、年々担ぎ手不足もあり女性も参加できるようになったそうです。お祭りには、怪我がつきものです。そのためフィナーレの場である海南神社の参道では、激しく躍動感がある動きで盛り上げるため、女性は怪我の心配があるので、男性がやることが多いです。
最初に海南神社に戻るのは獅子です。通常3,4回ほど鳥居をくぐるくぐらないを繰り返し焦らします。しかし、昨年は、4年ぶりとなる例大祭。さらに、入船が年番を担当するのは、11年ぶりのため、いつも以上に大勢の観客に盛り上げてもらい、7回ほど焦らしを行っていました。担ぎ手と祭り役員とのドラマがありましたが、最後の最後まで大勢の観客に見守られ「みんなの待ち望んでいた海南神社の例大祭の帰還」にふさわしい、感動のフィナーレとなりました。

最後は、付け神輿、獅子、神輿の順で収めていきます。三崎下町が一つとなり、皆が、息を揃えて唄い、強い眼差しで海南神社の本殿を見つめている姿を間近で見ることができました。地区ごとに役割は違うけれど、同じ方向を向いて団結している姿、暑苦しいほどの情熱には、心動かされるものがあります。